「ナチスが月から攻めてくる!」
映画「アイアン・スカイ」を観てきた。
1945年、連合軍の猛攻撃にさらされ、ナチス・ドイツは完全に敗北する。しかし、その一部の残党たちはひそかに月の裏側へと逃亡を図っていたのだった。そして70年の歳月をかけてその科学技術を結集、秘密基地を建造していた。そして2018年、虎視眈々と連合軍への復讐の機会をうかがっていた彼らは、最終調査のために地球へナチス党員を派遣、UFO軍団がついに積年の復讐を遂げるために地球に向けて出撃するのだった。
バカ映画である。ナチ映画である。観に行かなくては・・・・・・・
と、謎の使命感に駆られ、学校の課題提出後、眠気を堪えながら、上映最終日にサロンシネマまで観に行ったわけだが・・・・・・面白かった。眠かったけど。(映画自体が眠いのでは断じてないです。)
バカ映画といったが、こういう作品はそのままの意味ではない。
この映画で監督はナチスを描く上で、あるメッセージを込めている。
それは、ナチスを批判するというよりは、現代アメリカを批判、風刺している点である。
批判、風刺をユーモアで表現しているのだ。ブラックな。
まず大統領役がサラ・ペイリンに似ている。
これは馴染みがないので解りにくいが、ホワイトハウスでの初登場シーンでサラ・ペイリンがランニングマシーンで運動している。
そして部屋の中にはライフルや動物のはく製が置かれている。
それは実際の彼女がアウトドア愛好家で、趣味は釣りと狩猟であることを意味している。
面白いのはナチスが月から地球に攻めてくることを知った大統領役のサラ・ペイリンが
「月面ナチスの侵略が次の選挙戦に使える!」
と、思う点である。
そしてとうとう戦争になるのだが、プロパガンダ担当の部下がサラ・ペイリンに言う、
部下「すみません、大統領! 戦争になりました。」
サラ・ペイリン「でかしたわっ!アナタ!」
部下「はっ???」
彼女は言う
「フフフ・・・・・・戦争を起こした大統領は必ず再選されるのよ・・・・・・・・。」
今、アメリカの大統領選で使われている手法。それがナチスの広報戦略なのだ。
政治にポスターやラジオ、映画など、メディアを大量に持ち込んだのは当時の時代性も相まってナチスなのである。
このナチスが用いたプロパガンダ戦略が現代米大統領選で用いられている手法と寸分違わないことなどを描いているあたり、風刺が効いているのだ。
風刺をコメディーで表現する。バカ映画といったが、これはすごく難しいことで、センスが必要だし、こういう笑いは知性を感じるのだ。頭が相当良くないとできない。
ナチスを描くこと自体、歴史背景からタブーとされていたが時代とともに変わっていった。
ヒトラーを徹底的に悪に描く映画もあれば、独裁者として、一人の人間としての苦悩、内面を描いた映画もある。
「アイアン・スカイ」はコメディである。
そのことについてメル・ブルックスはこう発言している。
これは強権的な支配階級とか政治家というのはユーモアのセンスが足りないということを茶化している。
「ヒトラーやムッソリーニに言葉で対抗するのは無理なんだ。あいつらは口がたつから、・・・だからコメディで対抗したらあっちはぐうの音も出ないだろう。」
ギャグで対抗しようという心意気があるのだ。
ナチ映画を使命感で観に行ったというのは、このボンクラの少年期のトラウマが関係している。
さかのぼること9年前のクリスマス、当時小6であったボンクラは何気なくNHKのチャンネルを回した。
すると画面には白黒の第二次世界大戦「アウシュヴィッツ」についての実録フィルムが放映されていたのだ。
なぜだかそのまま見入ってしまった。
そして言葉を失った。
そこにはホラーやスプラッターなどの軽々しいグロ描写を観て騒ぐような、興味本位では決して観てはいけない実際に起きた圧倒的な人間の残酷(残虐)さがあった。
当時、公文をさぼって放課後、野球をしたりする阿呆ガキだったボンクラは、そのあまりの内容に苦悶した・・・・・・・・・。
そして、大晦日前にまたNHKにチャンネル回すと今度はベトナム戦争が放映されていたのだが・・・・。(ちなみにこの実録フィルムシリーズは図書館で全て観ました。)
あまりの衝撃に年明けに関連書籍を読み漁ったのは言うまでもない。
そこでまた衝撃の事実を知ることになる。
アウシュビッツから始まり、ネオナチの存在、ホロコースト、ダッハウ収容所など。
とくにホロコースト(焼いた生贄)には絶句した。そのあまりの内容に、小学校の卒業作文に「ホロコースト」について書いてしまったのは、戦争という人類の黒い歴史以上にこのボンクラの黒歴史でもある。
それほどショックを受けたということだ。
数年後、ドラマ「白い巨塔」でフィクションとして世界で初めてアウシュビッツでロケが行われたことが話題になったことも覚えている。
『質屋』という映画がある。これは当時ユダヤ系が中心であったアメリカ映画界が初めてホロコーストを描いた映画である。
大尊敬する評論家、町山智浩さんのブログからセリフを引用させてもらってpart1を終わります。
(ユダヤ人の差別の歴史が解りやすいと思います。)
↓ ↓ ↓ ↓
ハーレムで質屋を営むソルに、弟子のヘスースはこう質問する。
「どうして、You People(あなたたち、この場合はユダヤ系)は金儲けが上手なんですか?」
「……よかろう……成功の秘密を教えてやる!」ソルは堰を切ったように話し出す。
「まず、数千年が必要だ。その間、古臭い伝説以外に何も頼れるものはない。
自分の祖国も土地も持てない。だから農業も狩りもできない。何もない。
同じ土地に長く住むことも許されないし、自分たちを守る軍隊もない。
あるのは自分の脳みそだけだ。その脳みそと古代の伝説が、
自分は選ばれた民だと励ましてくれる。たとえ貧しくてもな」
紀元70年頃、イスラエルはローマ帝国に反乱したが鎮圧され、ユダヤ人は国を滅ぼされ、世界中に離散した。
各国に難民として流入した彼らは、農業を始め、多くの職業から排除された。弾圧された二千年間、彼らを支えたのは「神に選ばれた民」という誇りだけだった。
「そしてユダヤ人は商売を思いついた。
布を安く買って二つに切って元値より高く売る。
そんな小さな商売を延々と繰り返した。節約して金を貯めた。
何世紀もだ。
私たちは耕す土地を持つことをあきらめた。
そして商売人と呼ばれ、金貸しと呼ばれ、魔女と呼ばれ、質屋と呼ばれ、Sheenyie、kike(共にユダヤ系への蔑称)と呼ばれたんだ!」
ユダヤ人の最初の商売は古着の買い取りと再販だった。マンハッタンには今でもユダヤ系の被服街がある。
その次は、服を預かって、代わりに金を貸す、という商売、質屋に発展した。
旧約聖書で神は同胞に金を貸して利子を取ることを禁じていた。ユダヤ教から派生したキリスト教もイスラム教も同じように、同胞に金を貸して利子を稼ぐのをはタブーとした。ただし、異教徒相手なら話は別だ。
ヨーロッパのキリスト教圏で、ユダヤ系は農業など普通の仕事に就くことを禁じられたので、キリスト教徒に金を貸す仕事を始めた。同じようにして質屋も始まった。担保として貴金属類を扱うため、ユダヤ系はゴールド、シルバー、ダイヤモンド、クリスタルなどの苗字を持つようになった。
マンハッタンの被服街の隣には宝石店が並んでいる。
黒人の老人が科学や芸術の話をしに来たがソルは冷たく追い返してこうつぶやく。
「なんて生き物だ」
「どうして“生き物”なんて呼ぶんですか?」アフリカ系のプエルトリコ人であるヘスースが珍しく食ってかかった。
「あのじいさんが黒人だからですか?」
「私は人種差別はしない」ソルは苦笑した。「どんな人間も平等にクソだ」
ヘスースは反論する。
「違います! どんな人間も神の子です!」
ヘスースとはJesusジーザス、つまり神の子イエス・キリストのスペイン語読みだ。
「ほう、お前は神なんか信じているのか?」ソルは驚いてみせる。
「私は神を信じない。芸術も科学も政治も哲学も信じない!」
ユダヤ人はユダヤの神を信じたせいで二千年も迫害された。
ソルは実は戦前、大学教授だった。しかし学問では家族を守れなかった。
政治も芸術も哲学も、ホロコーストを止めてくれなかった。
「では、先生は何も信じないのですか?」
「金だけだ」
part2へつづく・・・・・・・・

サラ・ルイーズ・ペイリン (Sarah Louise Palin、1964~)
保守派の政治家。共和党所属。

メル・ブルックス(Mel Brooks, 1926~)
映画監督、脚本家、俳優、プロデューサー。
*正直このボンクラのブログは町山智浩さんの著作などから少しパクっている部分があります!
個人的に後にも先にも本当に信用できる評論家だと思っています。




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