NHKの朝ドラ「カーネーション」はファッション・デザイナー “コシノ三姉妹”の母 小篠綾子 の半生をモデルとした話だ。
作中では綾子が糸子という名に変えてあり、“糸子”という名前は、糸子の祖父が「一生糸で困らないように」という想いで名付けた。
俺が面白いと感じた理由は二つある。
一つは通常の朝ドラ同様、カーネーションも戦前、戦中、戦後を映しだす訳だが、当時の女性の “価値の量り” だ。
当時の女性は仕事から遠ざけられていて、早くから結婚を強いられ、男性から愛されることによってかろうじて自分に意味を見出していたと、 女性にとっては自由を実感しづらい、そんな社会であったんだろうなと思っていた。
もちろんそういった面も映しだすのだが、糸子の男勝りの性格、何よりファッションに魅せられた情熱的な行動が、その縛られた価値観をきれいに気持ちよくぶち壊してくれる。
裏腹に、情熱的な行動力と度胸、性格から生じる世間との温度差、傲慢さから周囲の反感を買ってしまう。
戦中、洋裁店で働く女性たちは黙って耐える。様々な嗜好品が贅沢とされ、ファッションも規制される、夫が戦死し、一日中空襲の恐怖に休むこともできない毎日についに思考を停止する。
疲労も頂点に達したころ、日本の敗戦がラヂオで流れる。 近所のおっちゃんが敗戦を叫びながら洋裁店の前を走り過ぎる。
糸子は言う、
「さっ昼にしようか」
戦中黙って耐えてきたものが、一気に溢れだし糸子が泣き叫ぶシーンはとても印象的だ。
糸子は明るく、純粋で、不器用だ。 自分の信じたモノに真っすぐ行動できる信念もある。好奇心も人一倍だし、楽観的で自己中でもある。
それでいて優しく、配慮もできるがそれが毒になる人からは嫌悪されてしまう。そして それに傷つき、悩む。 自分が好きなものを喜んでもらえないことから感じる寂しさや小さな孤独に共感する人も多いはずだ。
本当に魅力的な主人公だ。
二つ目は、糸子の「顔」だ!
戦後に雑誌「婦人美粧」が復刊し、職場の仲間と新しい時代のファッションに興奮する様子。
闇市で新しい生地(青の下地に白の水玉模様)を見つけた時のワクワクする様子。
何もないところから洋服を作るシーンの糸子の表情は観ているだけで幸せな気分になる。
これら一つ一つの顔が本当に洋服が好きなんだなと感じさせる。 自然と自分は共感し、笑顔になってしまう。
「かつての敵国アメリカが、今の私たちにはまぶしくてしゃあありません」
という 糸子のナレーションはとても純粋で素直な印象を与えてくれる。
思い出したが、俺はコシノ三姉妹の次女、コシノジュンコのTシャツを買ったことがある。
冬に柔道着の下着としてジャスコで買ったのだ。 下地の胸に「JUNKO KOSHINO」と入っていたシンプルなものだった。
母には「あら、コシノ順子知らんの?」と言われた。(中坊が知るわけねえだろ!)
建築家 安藤忠雄 [単行本] 安藤 忠雄(著)
大学入学前に読んだ「建築家 安藤忠雄」では長女、コシノヒロコの「小篠邸」に関する安藤忠雄の挑戦が拝読できる。
安藤は、「彼女の個性に負けぬよう、私もまた、世間の常識とは異なる形で、自分なりに思う"豊かな" 家を作ろうと思った。」と述べている。
「小篠邸」
カーネーションは朝ドラ史上最高傑作と業界からの評価が高い。 それは、働く女性、男性問わず糸子から「処世術」が学べるからではないだろうか。
野心のすすめ (講談社現代新書) [新書] 林 真理子(著)
林 真理子は「野心のすすめ」のなかでこう述べている。
「かつて、NHKで初の女性局長となった小林由紀子さんから伺った、印象深いお話があります。
------------女性が会社に入ってから数年は、やはり「ウサギ」として可愛がられなきゃいけない。最初から「トラ」をやっていると、「なんだ、あいつ。生意気」って嫌われるだけですから。
まずは、ウサギちゃんとして仕事を教えてもらったり、人間関係を築いたりする。しかし、いつまでもウサギをやっていると、一生「使われる」立場で終わってしまうから、いつかトラにならなければならない。しかし、女性がウサギから急にトラに変わろうとすると、驚いた男性たちからモロに反撃されますから、トラに変身するタイミングは十分に考えなければならないでしょう。
半分はウサギのままで、半分トラになりかけ、みたいな期間でワンクッション置いた方がいいかもしれない。男の人って、自分の背丈より大きくなろうとする女性は必ず痛めつけようとする。その嫉妬の凄さといったら、ハンパじゃありません。
私もコピーライター時代、トラになったとたんに叩かれましたから。
トラへと姿を変えるのは三十歳ぐらいが良いのかなぁと思いますが、あんまり長年ウサギをやっているとウサギ癖がついてしまい、もはやトラになりたくても変身できなくなってしまうから要注意----------------。 」
社会で結果を出す女性の強さの共通点から林と糸子は似ていると感じてしまう。
林自身、本を出し始めた時、男の同級生から急に悪口を言われ始めたそうだ。(いやだねぇ~)
向田邦子の「阿修羅のごとく」は四姉妹の話だ。
姉妹が台所で乾燥してひび割れた餅を見ながら、
「ねぇ、何か思い出さない? あれよ、母さんの “かかと” あーっっ!!そっくりー!」
というシーン等は、描写が上手いなぁ~と思います。(短編の「大根と月」も良いです)
俺が小六(だから十一年前か!)に観ていたドラマ「末っ子長男姉三人」も思い出した。
『末っ子長男姉三人』(TBS)
阿修羅のごとくほどドロドロしてないので面白かった。
末っ子長男と結婚したら姉が三人出戻ってきて姑が四人になっちゃった!という内容だ。
姉妹をテーマとしたドラマは面白い。それは俺が四人姉妹の一人だけ男で、姉と妹が二人いるなかで育ったからだろう。
自分がもし女で生まれていて(それはそれで親父が気の毒だ)四姉妹だったとしたらと想像してしまうのだ。(キモッ!)
そしたら多分俺が一番可愛いと思うぞ!・・・・・
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業界ではもう話題になっていました ↓(是非どうぞ)
おあとがよろしいようで!
左から長女ヒロコ、次女ジュンコ、三女ミチコは日本のファッションデザイナー。
黒いドレスを着た女性は、母綾子を演じた尾野真知子。
向田 邦子(むこうだ くにこ、1929年(昭和4年)11月28日 - 1981年(昭和56年)8月22日)は、テレビドラマ脚本家、エッセイスト、小説家。
1981年(昭和56年)8月22日、旅行中の台湾苗栗県三義郷で遠東航空機墜落事故にて死去。享年51。
白百合短期大学(現・白百合女子大学)卒業後1960年、日本放送協会に入局。多数のテレビドラマのプロデュースを手がけ、ヒットを連発する。1990年エランドール賞協会賞受賞。後におしんのプロデューサーとしての資質をかわれて、制作部ドラ部長に昇進。
他にも多くの好評ドラマに関与し、NHK大阪局制作の朝の連続テレビ小説「京、ふたり」が、大阪局制作としては尋常ではない程の高視聴率だった為、ドラマ部長から女性初の編成部長に昇進。しかし、「君の名は」の視聴率と局内においても批判を浴びて退職。
最後にカーネーションを好きになった強い理由が糸子の妹、静子が言うセリフだ。
カーネーションOP
「好きなことするちゅうんはな、見てるほど楽とちゃうんやで」
どれほどこの言葉に救われる人がいるだろうか。
らしくない内容でした! 背景が黒の内容ではないですな。 来週は筋肉の話をします! ではでは~
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